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公開日:2023.10.30
更新日:2023.10.30

各国の特許制度について~主要国のポイントをまとめました~

1.各国の特許制度について

特許制度は、各国で独自に定められています。そのため、特許権を取得するためには、その国の制度に応じた手続きを執らなければなりません。しかし、各国の特許制度には類似する部分も多くあります。そのため、権利を取得したい国の特許制度の特徴を理解することで、それらの国において適切な手続きを執って円滑に権利を取得することができます。

以下に、主要国について出願時に注意しておきたいポイントをまとめました。外国で特許権の取得を考えている方はぜひ参考にしてください。ただし、実際に手続を行う際には、より詳細に各国の法令を参照して確実に行う必要がありますのでご注意ください。

 

2.日本

【請求項】

(1)マルチクレーム※1:〇、マルチマルチクレーム※2:×※3
(2)請求項の数に応じて出願審査請求料が増加します。

※1 マルチクレームとは、「他の二以上の請求項の記載を択一的に引用する請求項」を意味します。
※2 マルチマルチクレームとは、「他の二以上の請求項の記載を択一的に引用する請求項(マルチクレーム)を引用する、他の二以上の請求項の記載を択一的に引用する請求項」を意味します。
※3 令和441日からマルチマルチクレームが認められなくなりました。出願日が令和441日より前の出願(分割出願、PCT出願)については、マルチマルチクレームが認めらます。

【分割出願ができる期間】

(1)補正ができる期間
(2)特許査定の謄本送達日から30日以内(ただし、前置審査において特許査定がされた場合、審決により審査に差し戻されて、特許査定がされた場合、設定登録がなされた後は除かれます)
(3)最初の拒絶査定の謄本送達日から3月以内

【自発補正ができる期間】

拒絶理由通知(OA(Office Action)とも言います)を受けるまで可能です。拒絶理由通知を受けない場合には、特許査定の謄本送達前まで可能です。

 

3.米国

【外国出願制度】

有り。日本語での出願可能です。その後、英語の翻訳文を提出する必要があります。

【請求項】

(1)マルチクレーム:〇、マルチマルチクレーム:×
(2)マルチクレームが1つでもあると、追加料金が発生します。
(3)独立請求項の数が3を超えると、1項当たり追加料金が発生します。
(4)請求項の数が20を超えると、1項当たり追加料金が発生します。

【継続出願、一部継続出願、分割出願】

(1)それぞれ特許証が発行されるまで可能です。
(2)継続出願が日本の分割出願に対応します。
(3)一部継続出願は、新規事項の追加が可能です。
(4)分割出願は、限定要求で選択されなかった請求項に対して行います。

【仮出願】

仮出願が可能です。パワーポイント等で作成したスライド形式の書類も提出可能です。優先権を確保して、米国への本出願や他国でのパリ優先権出願、PCT出願が可能です。

FOA (Final Office Action)を受けたときの対応】

(1)軽微な補正や審査官が要求する補正を行うことができます。
(2)AFCP (After Final Consideration Pilot)を請求して補正することができます。
(3)RCE(継続審査請求)を請求することができます。
(4)審判請求ができます。また、pre-appealを請求項することができます。

 

4.中国

【外国語出願制度】

なし。出願書類を中国語で作成する必要があります。

【請求項】

(1)マルチクレーム:〇、マルチマルチクレーム:×
(2)請求項の数が10を超えると、1項当たり追加料金が発生します。
(3)従属項は従属する独立請求項の後、かつ他の独立請求項の前に記載する必要があります。(例:独立請求項A、Aの従属項、独立請求項B、Bの従属項の順序で記載する。)

【請求項の補正】

(1)OAが出た後は、新請求項を追加することはできません。ただし、従属項を独立請求項に書き換えることはできます。
(2)OAが出た後は、独立請求項の権利範囲を拡張することはできません。

【自発補正】

(1)実体審査開始の通知日から3カ月以内まで自発補正が可能です。

【分割出願ができる期間】

(1)出願係属中及び特許査定通知の受領日から2月以内。
(2)拒絶査定通知を受領した日から3月以内。
(3)孫出願をする場合には、子出願が上記(1)、(2)満たすだけでなく、親出願も上記(1)、(2)満たす必要があります。
(4)再審査請求中(審判係属中)は、いつでも分割出願が可能です。
(5)登録審決が出た場合は、登録料納付期限までは分割出願が可能です。
(6)拒絶審決が出た場合は、審決取消訴訟の提訴期間に分割出願が可能です。

 

5.EPC(欧州)

EPC(European Patent Convention)は、欧州特許条約の略であり、この条約に基づいて欧州特許庁(EPO)に対して行った出願に特許を認める制度です。

【外国語出願制度】

有り。日本語での出願可能です。その後、英語、ドイツ語、フランス語のいずれかの翻訳文を提出する必要があります。

【請求項】

(1)マルチクレーム:〇、マルチマルチクレーム:〇
(2)請求項の数が15を超えると、1項当たり追加料金が発生します。
(3)2パート形式で記載する必要があります。
(4)各構成に参照符号を付す必要があります。

【請求項の補正】

(1)補正の要件が、日本等に比べて厳しいです。
(2)図面からの補正は困難です。
(3)中間上位概念化は認められません。
(4)権利範囲を拡張する補正は認められません。
(5)請求項の追加は認められません。

【自発補正】

(1)サーチレポートを受け取る前は、原則補正を行うことができません。
(2)PCTの移行時には補正を行うことができます。

【分割出願ができる期間】

(1)出願係属中。
(2)特許査定を受けた場合は特許公報の欧州特許付与の旨の公表日まで。
(3)拒絶査定を受けた場合は審判請求書の提出期間中。

 

6.インド

【外国語出願制度】

なし。ヒンディー語又は英語で出願する必要があります。

【請求項】

(1)マルチクレーム:〇、マルチマルチクレーム:〇
(2)請求項の数が10項を越える場合、1項当たり追加料金が発生します。
(3)請求項の要素に参照符号を付す必要があります。

【請求項の補正】

(1)権利範囲を拡張する補正は認められません。

【自発補正】

(1)可能です。ただし、庁費用が発生します。

【分割出願】

(1)特許付与前まで分割出願が可能です。
(2)クレームが発明の単一性を満たさないと指摘された場合、又は自発的に分割出願を行うことが可能です。しかし、後者の分割出願は、親出願に複数の発明が包含されていることを証明する必要があります。
(3)分割出願に基づく分割出願はできません。

 

7.まとめ

以上、主要国の特許制度のポイントをまとめてみましたが、いかがでしたか。各国の特許制度は、更に細かく定められており、法改正によって制度が変わることもあります。実際に外国に出願される際は、外国特許出願を多数扱っており諸外国の特許制度に詳しい特許事務所に依頼をすることをお勧めします。弊所においても多数の外国出願実績がありますので、ぜひお気軽にご相談ください。ご相談はこちら

弁理士 勝見 陽介

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